透明水彩絵の具は写実的な細密画を描くのに向いている画材だ【透明水彩で描く 世界でいちばん美しい細密画 書評】


透明水彩で描く 世界でいちばん美しい細密画


この本はアンナ・メイソンという水彩画家の絵画技法の解説書です。絵画技法の解説書ですが作品も沢山掲載されているので画集としても楽しめます。

このアンナ・メイソンという人、今回初めて知ったんですけど絵上手いですね。モチーフは主に植物などで写実的な細密画です。作品は全て透明水彩絵の具で描かれていて、かなり細かな仕事がなされていますね。

一般的に言って透明水彩絵の具でこういった写実的な細密画を描くというのは珍しいですね。透明水彩絵の具はあまり写実的な細密画を描くのには向いていない絵の具だと思われていますからね。

なので、このレベルの絵を透明水彩絵の具で描いたの?という驚きがあります。

透明水彩絵の具があまり写実的な細密画を描くのには向いていない絵の具だと思われてるのは、透明水彩絵の具が水溶性だからです。透明水彩絵の具は水に溶けるのであまり重ね塗りに向いていないんですね。重ね塗りすると下に塗った色が解け出てきますからね。

これ以外にも透明水彩絵の具は透明度が高いので下に塗った色が透けてしまうという弱点もあります。こういった透明水彩絵の具の特性を考えると透明水彩絵の具で写実的な細密画を描くのはとても難易度が高く、写実的な細密画を描くには不向きな絵の具だと言えるわけですね。

なので写実的な細密画を描く場合、一般的にはアクリル絵の具などの油性の絵の具を使うわけですけども、どうしてもキャンバスなど大きな画面が必要になります。ただキャンバスなどはどうしても場所を取りますから、気軽に描くというわけにはいかないのでやっぱり紙に描きたいんですよね。紙だと安いし場所も取らないですからね。

アクリル絵の具などの油性の絵の具は紙に描くのには向いてないですから、透明水彩絵の具などの水溶性の絵の具で写実的な細密画を描く技法があれば、誰でも気軽にチャレンジできるというわけですね。

さて、この本ではその透明水彩絵の具などの水溶性の絵の具で写実的な細密画を描く技法が紹介されているわけですけども、その技法の重要なポイントはやはり色を塗り重ねていく順番ということになります。水溶性の絵の具の弱点を克服するためには色を塗り重ねていく順番が大事なんですね。

順番としてはまず最も明るい色を最初に塗り、次に最も暗い色を塗ると書かれています。こうすることで画面の一番明るい色調と暗い色調が決まるので色調の方向性がはっきりするわけですね。

色調の方向性がはっきりしたら中間の明るさの色を塗っていきますが、明るめの中間色、暗めの中間色、その間の中間色といった感じで三段階に分けて塗り分けていくそうです。
そして画面全体の色調のバランスを取ります。

最後に細部のディテールを描いていって完成というわけですが、なかなか繊細な作業だと言えますね。写実的な細密画を描く時の一番の面白さはやはり細部のディテールを描くことなのですぐに細部のディテールを描きたくなるところですが、そこまで進むまでにはやはり十分な下仕事をしておかないといけないというわけですね。

油性の絵の具であればいきなり細部のディテールを描いていくという荒業もつかえるわけですけど、水溶性の絵の具で描く場合にはやはりこうした緻密な計画性がないとここまでの写実的な細密画は描けないというわけですね。

(追記)

ついでに昔、私がリアルイラストを描く時に使っていた方法を紹介しときますね。

それは透明水彩絵の具をとく時にリキテックスの艶出しメディウムを混ぜるという方法です。

リキテックス アクリル絵具 リキテックス グロスポリマーメディウム 50ml

透明水彩絵の具をとく時にリキテックスの艶出しメディウムを混ぜると、透明水彩絵の具がほぼ耐水性になって重ね塗りがやりやすくなるんですよ。艶出しメディウムというのはニスみたいなものなので、画面の仕上がりも綺麗です。

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