キングダム・カム 愛蔵版 (ShoPro Books)
主要なキャラが全員老人という異色のアメコミ
アメコミというものは正直日本ではあまり人気がなくてほとんど読まれていないと思いますが、面白くないかというと勿論そうではなくて面白いものも沢山あります。私も以前はアメコミなんてただヒーローが悪を倒して終わりみたいな大味なものだと思っていたのですがそうではない作品も沢山あって、その中でも特に素晴らしい作品がこのキングダム・カムです。
キングダム・カムが発売されたのは1996年のことですが、今読んでも抜群に面白いですね。この漫画はいわゆるIFストーリーと呼ばれるもので、もし〇〇が〇〇だったら・・・といった設定で描かれていて、いわゆるレギュラーシリーズのものとは別のラインの漫画です。それだけにストーリーの自由度が高くて面白い設定で描かれているわけなんですね。
どれだけ設定が面白いかというと、なんと登場する歴代の超人達がみんな老人なんですよ。主人公であるスーパーマンも老人になっていて頭が白髪なんですね。勿論バットマンも白髪の老人で、ジャスティスリーグもみんな老人です。とにかく主要な登場キャラが全員老人という異色のアメコミなんですね。
ではどんなストーリーなのか？まずあらすじを追ってみましょう【ネタバレあり】。
あらすじ
まずストーリーはヨハネの黙示録に沿う形で進んでいきます。かつて自身も超人だった老人が死の床にあり、そこでマッケイという老人の牧師にヨハネの黙示録が現実になろうとしていることを告げてなくなります。そしてこのマッケイという牧師の前に黒いガウンを着た謎の男が現れ、マッケイはこの謎の男に導かれてアルマゲドンを見届けることになります。なぜアルマゲドンが迫っているのか？というと、それはかつての超人達が引退してしまったからで、スーパーマンをはじめジャスティスリーグの面々も既に引退していて世が荒廃しているからなんですね。
かつて世の治安を守っていたスーパーマン達が引退した後、若い超人達が後を継いだのですが治安の維持はおろか自分達の縄張り争いを初めてしまい、人間たちに危害を加える有様で世界はめちゃくちゃになってしまっています。
そこで今や老人となったスーパーマンをはじめとしたかつてのヒーロー達が立ち上がり、再び治安の回復に乗り出すのですが若い超人達が全然言うことを聞かないわけです。そして遂に事態は老人の超人達と若い超人達との大戦争へと発展していくことになるんですね。
さらにそこへ超人達の支配に嫌気がさした人間たちが参戦して争う超人達に対して核爆弾を投下し、遂にアルマゲドンが現実のものとなってしまいます。この核攻撃によってほとんどの超人達は死んでしまうのですが、スーパーマンをはじめとしたかつてのヒーロー達はなんとか生き残ります。
生き残ったスーパーマンは核攻撃をした人間達への怒りに取りつかれ、復讐のため国連本部へと乗り込んでいきます。そしてスーパーマンが復讐を果たそうとしたその時、事態の一部始終を見ていたマッケイという牧師が現れ、スーパーマンを説得して人間への復讐を思いとどまらせます。
マッケイの説得により超人達と人間達は再び和解し、平和が取り戻されていくことになります。そして再び超人達が治安を守る穏やかな日常が戻ってきてめでたしめでたしです。
アレックス・ロスの圧倒的な絵の上手さ！
さてこんな感じでキングダム・カムは圧倒的にストーリーが面白い漫画なんですが、素晴らしいのはストーリーだけではないんですよ。特筆すべきはアレックス・ロスによる圧倒的な絵の上手さなんですね。
キングダム・カムの絵は全編ガッシュ絵の具で描かれているのですが、仕上げまでにはやや複雑な工程を経ています。まずラフを起こした後、ラフに沿ってモデルを使って写真を撮影し、その写真資料を元にアレックス・ロスが絵を描き起こすという、かなり手の込んだ制作方法をとっています。
じつはこうしたイラストの制作方法は昔からあるアメリカンイラストレーションの制作方法と同じやり方で、それだけに仕上がりはとても写実的で美しくアメコミにおいても珍しい制作方法ではないかと思います。全編が美しいアメリカンイラストレーションによって構成されているという意味でも異色のコミックだと言えるわけですね。
キングダム・カムの絵は通常のいわゆるアメコミ的な絵ではないので、アメコミ的な絵に拒絶反応を示す人でも拒否感を感じずに読めると思います。ストーリーも面白いですしアメリカンイラストレーションの画集としても楽しめるそんな作品だと言えますね。
【リアル絵Tシャツ屋さん】
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