異界に迷い込むと時間と空間が逆転する【千と千尋の神隠し 千尋時間巻き戻し説の補足】


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以前、千と千尋の神隠しについてこんな記事を書きました。

千と千尋の神隠しのラストの意味がやっと解明できた!【千尋時間巻き戻し説】

この記事の中で私は千尋が両親と再会するために自分の時間を巻き戻しているんじゃないかと書いたわけですが、この説の説明で若干わかりづらいというか、説明不足になっているところがあるかと思いますので補足してみたいと思います。

私が説明不足になっていると考えているのはこういうことです。

千尋が自分の時間を巻き戻したのは成長前の姿に戻っているわけだから確実だとして、なぜ千尋に自分の時間を巻き戻すなどという芸当が可能だったのか?ということです。つまり千尋はそんな能力をいつ身に付けたんだ?という話ですね。

これ実は違うんですよ。千尋がこういう能力を身に付けたという話じゃないんですね。そうではなくて、これは異界だから起こりえたことなんです。

異界では時間と空間が逆転している

どういうことかというと、異界では時間と空間は逆転しているんですね。どういうふうに時間と空間が逆転しているかというとこういうことです。

私たちの現実世界では空間は自由に行き来できますが、時間は自由に行き来できません。時間の方は同じパターンを繰り返していますから(円環的な時間)、私たちは時間の上では同じパターンに拘束されているわけですね。

ただこれが異界に迷い込むと逆転するわけです。つまり異界では時間を自由に行き来できるようになる代わりに、空間は同じ場所に拘束されてしまうわけですね。千と千尋の神隠しの場合だと、千尋は湯屋という場所に拘束されてしまっているわけです。

そしてその代わりに千尋は時間を自由に行き来できるようになったというわけです。ですから千尋が時間を巻き戻す特殊能力を身に付けたという話ではなくて、異界という場所が時間を自由に行き来できる場所だということなんですね。

なので千尋時間巻き戻し説を正確に表現するなら、千尋は時間を巻き戻しているんじゃなくて時間を移動しているという表現の方が正しいかと思います。つまり千尋は両親のいる時間まで時間を移動して両親を迎えに行ったということなんですね。

なぜ千尋は湯屋で成長することができたのか?

そしてこの異界において時間と空間が逆転していることが千尋の成長にとって重要な意味を持ってきます。というのは、異界において時間と空間が逆転しているからこそ千尋は湯屋で成長することができたと言えるからです。

どういうことかというと、先に書いたように私たちは現実世界においては時間を同じパターンで繰り返しているわけですね。私たちはこの時間を同じパターンで繰り返すことを自分の性格と言ったり、時には呪いと言ったりしているわけです。

千尋の場合は無気力で臆病な少女というパターンを繰り返していて、現実世界では無気力で臆病な少女というパターンを繰り返すことから抜け出すことが出来ないわけです。

しかし千尋は異界に迷い込んだことでこの無気力で臆病な少女というパターンからあっさり抜け出すことが出来たわけですね。それもこれも異界においては時間と空間が逆転しているからです。

千尋は湯屋という場所に拘束されるわけですが、その代わりに時間を自由に移動することが出来るようになっているので、もはやこれまで繰り返してきた無気力で臆病な少女という時間のパターンに縛られることもなくなったわけです。

そしてその結果、千尋は無気力で臆病な少女から活発で勇気のある少女に変貌したというわけなんですね。

異界に迷い込むと時間と空間が逆転するという物語は実は世界中に沢山ある

ということでここまでが千尋時間巻き戻し説の補足なんですが、最後になんで異界では時間と空間が逆転するという話が出てくるのかという説明をしておきましょう。

実は異界に迷い込むと時間と空間が逆転するというのは、昔からよくある物語の型なんですね。こうしたフォーマットで作られたおとぎ話というのは世界中に沢山あって、誰もが知っているおとぎ話もこういったフォーマットで作られていることが多々あるんですね。

例えば日本のおとぎ話だと浦島太郎がそうですね。浦島太郎は竜宮城に拘束されるわけですが、その間に一気に年を取ってしまうわけです。つまり浦島太郎でも竜宮城という異界で時間と空間の逆転が起きているわけですね。

あとこれとは逆に異界の住人が現実世界に迷い込むという物語の型もよくあります。

この場合、異界の住人は大概小さな入れ物に閉じ込められています(つまり空間的に拘束されている)。そのかわり異界の住人は魔法を使うことが出来るわけですね。この魔法の力の根源は時間を操れるということです。つまり願いを叶えたり(未来に行く)、壊れたものを直したり(過去に戻る)というわけですね。

例えを上げるとアラジンと魔法のランプなんかがそうですね。この場合、ランプの魔人はランプの中に閉じ込められていて、そのかわり魔法で願いを叶えることが出来るわけです。

つまりどちらの場合も異界の住人というのは空間的に拘束されていて、その代わりに時間を自由に操れるというわけです。この異界における時間と空間の逆転こそが異界に迷い込む物語の特徴だというわけですね。

そういうわけで、異界に迷い込むと時間と空間が逆転するという物語は世界中に沢山あって、千と千尋の神隠しもそうした物語の型に習って作られているんじゃないかというのが私の見立てというわけなのです。

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