今の時代にこれをやったら絶対に問題になる問題作【ねじ式 漫画評】


改訂版 ねじ式 つげ義春作品集

昔よく通っていた図書館に「つげ義春全集」が置いてあったこともあってつげ義春の作品は一応全て読んでいます。

つげ義春の作品は基本的に駄目人間の日常などを描いたものが多いのですが、この「ねじ式」はちょっと異彩を放っていて前衛的でシュールなアート漫画としてよく知られていますね。

つげ義春本人は当時この作品を「ラーメン屋の屋根の上で見た夢。原稿の締め切りが迫りヤケクソになって書いた」と言っています。

このラーメン屋の屋根の上で見た夢を漫画にしたという部分がその後拡大解釈されて、この作品をいろいろと精神分析的に深読みするというブームを巻き起こすわけですが、実のところこの作品は本当に原稿の締め切りが迫りヤケクソになって書かれたものである可能性の方が高いのではないかと思います。

というのも、この作品はそのほとんどがパクリによって成り立っていることが後に暴かれているからです。この作品の背景画や登場人物などが何かの写真を模写したものらしいというのは見ればすぐにわかりますが、その多くが当時の写真雑誌などに掲載されていた写真家の作品の模写だったと判明しています。

どこをどうパクッているかはネットで調べれば出てくるのでここでは詳しく書きませんけど、面白いのはそうしたことが判明してもそれを非難する人が全然いないということですね。

多分、今の時代だと雑誌などの写真をそのまま模写して背景に使ったら問題になるはずです。この漫画が描かれた1960年代はまだまだ著作権に対する意識が低かったですからこうしたことをやっても特に問題にならなかったわけですが、今こういうことをやるというのはおそらく怖くてできないでしょう。

そうした意味においてこの作品は奇跡みたいなものです。いろんな写真の模写をコラージュして漫画にしてみたら、とてつもなく面白い漫画が出来上がってしまったわけで、今の時代となってはもはや再現不可能な偉業です。

この作品についてはこのまま何も問題にせずそっとしておくのがいいと思います。問題になって出版差し止めになるのは悲しいですからね。

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