欧米と日本のヒット曲の比較論として読むと面白い【文化系のためのヒップホップ入門 書評】


文化系のためのヒップホップ入門

この本はヒップホップの歴史を誕生から現在まで曲紹介を交えながら解説した本でして、長谷川町蔵と大和田俊之が対談形式でヒップホップとは何かわかりやすく解説してくれています。(現在1巻と2巻が出ていて、今後3巻も出る予定だそうです。)

この本ではこれまでのヒップホップのヒット曲が網羅されているので、この本に載っている曲をユーチューブで漁っていけばヒップホップの歴史がおおよそわかるようになっていて、ヒップホップを本格的に聞いてみようという人にはおすすめの本です。

ただ、ほとんどの人はそんなことには全く興味がないと思います。というのは今の日本人のほとんどは洋楽に興味を失っていますし、その最たる原因は洋楽のヒット曲がほとんどヒップホップになってしまったことにあると思われるからです。

日本人にとってヒップホップは非常にとっつきにくく、いったいどこがいいのかさっぱりわからないというのが本音ですから、この本のコンセプトはそんな日本人にとっつきにくいヒップホップを日本人にわかりやすく解説することにあるというわけですね。

さて、この本はそんなヒップホップの入門書として読んでも勿論いいわけですが、それよりもこの本を欧米と日本のヒット曲の比較論として読んでみると俄然面白くなります。

この本によると現在の欧米のヒット曲は全てヒップホップの延長上にあると書かれています。どういうことかというと現在の欧米のヒット曲は基本的にループ曲になっているということでして、このループ曲の起源がヒップホップにあるというわけですね。

このループ曲とは何かというと、まず2つ3つの少ないコードを使ってトラックを作り、このトラックに歌メロをあてて、最後にその歌メロに歌詞をあてるといった作り方で作られた曲のことです。

ヒップホップはそもそもすでにある曲をサンプリングしてトラックを作っていましたからこうした作り方で曲を作るようになり、その後ポップスなども基本的にこうしたやり方で曲を作るようになったというわけですね。

これに対して日本のヒット曲はどうやって作られているかというと、まず歌メロと歌詞を作り、そのメロディーにコードをあてていってコード進行を作るといった順で曲を作ります。

ここで重要なのは日本のヒット曲には展開があるということでして、トラックはループしないということですね。欧米のヒット曲にはわずかなコードしか使われていないのに対して、日本のヒット曲には多くのコードが使われていて、曲がAメロ→Bメロ→サビへとどんどん展開していくという違いがあるわけです。

この本の中でも度々日本のヒット曲が引き合いに出されていて、欧米と日本のヒット曲が構造的にどう違うかという解説がなされています。こうした解説を読む限り、もはや欧米のヒット曲と日本のヒット曲は全くの別物というか別のジャンルの音楽といってもいいくらい大きな違いがあることがよくわかります。

曲の作り方が根本的に違うわけですから出来上がった曲が全くの別物になるのも当然といえば当然で、日本で洋楽離れが起きるのも日本の曲が外国でヒットしないのもある意味当然の帰結といえるのかもしれませんね。

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