コケはなぜに美しい (NHK出版新書)
この本は苔生物学の学者さんが書いた、苔の生態についての割とちゃんとした本です。勿論、専門書というわけではなく、わかりやすく書かれた苔生物学の入門書といった感じの本になっています。
この本を読むと苔の種類の見分け方や生態がだいたいわかるようになっているので、これから苔にハマろうかなという人にはなかなかいい本ですね。
例えば、私が読んで面白かったのは植物の進化の過程についての話です。
植物の進化は「藻類→苔→シダ→種子植物」の順に進化したわけですが、これが以前は「藻類→シダ→苔→種子植物」の順だと考えられていたそうで、このシダから苔に進化したというところが退化しているように見えることからこれを退行説と言うそうです。
現在は遺伝学などからこの退行説は否定されているそうですが、以前は植物の特徴などから進化の仮説が立てられていたのでこのような間違いが起きたということで、生物の進化は都合のいい特徴を抜き出せばどんな仮説でも作り出せるといった話が書かれていて面白いですね。
さて、この本ではこういった苔の生態の専門的な話だけでなく、日本全国の苔寺や苔の名所を写真付きで沢山紹介しているので、苔の名所のガイド本としても使うことができます。
私としてはやはり苔の生物学的な話よりも芸術品としての苔の方が興味をそそられますから、いろいろと美しい苔が見られる場所が紹介されているのはうれしいですね。
ということで、ここでこの本には紹介されていない場所ですが、私のとっておきの苔スポットを一つ紹介したいと思います。
ここです。
京都の嵐山にある常寂光寺の苔庭です。
この写真は紅葉の季節に私が撮影したものですが、とにかく苔庭の美しさが圧倒的な場所で、苔が一面絨毯の様に広がっていて見事です。
常寂光寺の苔庭は苔が好きな人には期待を裏切らない場所だと思いますよ。
ところで、この本にも書かれていますが最近は苔ブームということもあって有名な苔の名所から苔を採取して持ち帰り、ネットで売ったりする人がいるそうです。
苔は乾燥に弱い植物なのでたとえ一部でも苔庭から苔を掘り出すとそこから乾燥が始まって、やがて苔庭全体が駄目になってしまうこともあるそうなので、こうしたことは絶対やめましょうね。
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