大友克洋が監督をしたバンド・デシネ(ヨーロッパの漫画)風アート映画「大砲の街」が面白い【MEMORIES 映画評】


MEMORIES [DVD]

MEMORIESはアキラの後に作られた作品でオムニバス形式の映画です。三作品すべて大友克洋が監督をしているわけではなくて、「大砲の街」のみ大友克洋が監督をしています。原作や絵コンテ自体は確か三作品すべて大友克洋がやっているはずです。

この中でやはり一番面白いのは大友克洋が監督をした「大砲の街」ですね。この作品がとにかく面白い。前編ワンカットで編集されていて、大友克洋特有のごちゃこちゃメカがこれでもかと出てきます。作風はバンド・デシネ(ヨーロッパの漫画)風で、ややアートよりな感じです。

この映画、ストーリーといえるものはほぼなくて、大砲の街に暮らす装填手の一家の一日を描いていて、主人公はこの一家のお父さんと息子です。主人公のお父さんがやっている装填手という職業は大砲に弾を詰める作業をやる下っ端でして、装填手達が大砲に弾を詰める作業を延々とやった後、最後に砲撃手と呼ばれる上官が颯爽と現れて大砲を打ち、美味しいところを全部さらっていくという流れがなんともシュールです。

更に家に帰ってきてからは息子に「お父さんはどこと戦争をしているの」と聞かれ、「まだ知らなくていいからもう寝なさい」と自分でも知っているのか知らないのかよくわからない感じで答えるシーンでまたクスクスきます。このお父さんの徒労感がなんとも物悲しい雰囲気を醸し出していてとてもシュールですね。

この映画は映像的にも大変美しく、大友克洋的なごちゃごちゃメカの描写も堪能できますし、映像のテンポもいい物凄くよくできた短編映画です。一体何のために戦っているのかよくわからないけれど、とにかく戦わないといけないという理不尽さがよく出ています。

更に息子が「大人になったら装填手じゃなく砲撃手なるんだ!」と将来の希望を語たり追い打ちをかけて物語は終わります。つまりこうやってまた未来の装填手が育っていくというわけです。

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